■裁判と時効の援用

 消費者金融からの借入や、クレジットカードの利用代金等は、原則として5年間返済しなければ、消滅時効の援用という制度を利用することで、何十万、何百万円の借金を支払わなくてもよくなる可能性があります。

 しかし、これは5年間払わなかったら「自動的に消滅する」ものではありません。消滅時効の援用という手続(消滅時効を利用しようという意思)をとらない限り、日々遅延損害金が加算され、借金はどんどん増えていくことになります。

 また、すでに消滅時効の期間が経過していても、裁判に訴えてくる業者もありますので、その場合に、「もうどうせ時効なので」と何も対応せずにいると、業者側の主張がすべて認められてしまいます。以前相談にみえられた方も、そんな状況でした。

 15年以上返済していない業者(2社)から時を同じくして訴えられたのですが、「消滅時効」という制度だけは知っていたため、自分の借金はすでに消滅していると勘違いし、何も対応をしなかったそうです。そのため、業者側の主張がすべて認められることになり、2社合わせて300万円を超える額を払わなくてはならなくなってしまいました。裁判できちんと消滅時効を主張すれば、借金がゼロになったのですが、なまじっか「消滅時効」という制度を知っていたために、それがかえってマイナスになってしまいました。

 このご相談者の場合は、他にもいくつか借金があったため、上記2社の分も合わせて破産手続をとることになり、結果的に借金をゼロにすることができましたので、良かったのかどうかわかりませんが…。

 しかし、すでに時効期間が経過している業者から訴えられた時点で、適切な対応をしていれば、その2社の借金は消滅時効で払わなくて済んだわけですから、破産せずとも任意整理等の別の方法で解決できたかもしれません。

 繰り返しますが、時効期間が経過していても訴えてくる業者はいくつもあります。その場合、訴えられた側がきちんと対応(裁判上で消滅時効を主張する)しなければ、たとえ書面上からはっきり時効だとわかっても、裁判所は相手方の主張を認めざるを得ません。そうすると、払わなくて済んだはずの借金を、新たに背負うことになってしまいます。

 長期間払っていない業者から訴えられた場合は、決して放置をせず、当事務所へご相談下さい。

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