■時効完成後の返済

 貸金業者等からの借金は、更新事由がなければ、原則として5年で時効となります(消滅時効の援用という手続が必要ではありますが)。しかし、時効期間経過後であっても、借主の無知につけ込んで、催告書を送りつけたり、あるいは自宅訪問により督促をしてくる業者もあります。

 その場合、借主が消滅時効の援用をすることなく返済をしてしまうと(たとえ少額であっても)、借主の時効援用権がなくなってしまうのが原則です。そのため、すでに廃業した貸金業者から債権を譲り受けた業者が、時効期間が経過しているのを承知の上で、上記のような請求をしてくることがあります。

 請求を受けた借主は、たいていの場合、消滅時効の援用ができるケースだという事を知りません(知らないから返済してしまうのですが)。しかし、消滅時効の完成後に、一部であっても返済をしてしまった場合は、借主が時効の完成を知らなかったとしても、以後消滅時効を援用することは、「信義則」上許されない旨の最高裁判所の判決があります。ですから貸金業者等は、いろんな理由をつけて、たとえ少額でも払わせるように仕向けるわけです。一部でも払ってしまえば、上記のとおり、以後は消滅時効を主張することができませんので、払っていなかった期間の損害金も含めた全額を請求されることになってしまいます。

 しかし、上記の最高裁判所の判決は、「信義則」に反するか否かという言い回しをしていますので、一部支払いをしてしまった場合でも、個々の事情により、「信義則」に反しないと思われるような場合は、以後の消滅時効の主張ができる場合もあるということです。

 一般的に、貸金業者と借主を比べれば、法律知識や経験に圧倒的な差があると考えられます。その優位な立場を利用し、借主の無知に乗じて半ば強引に一部のみを返済させたような場合は、それ以後も消滅時効の援用が認められることもあり、実際に当事務所においてもこのような事例で、消滅時効の援用が認められたケースが複数あります。

 もちろん、このような督促を受けた場合は、「専門家に相談する」等と突っぱね、司法書士等に相談されるのが最良の方法ではありますが、突っぱねきれずに返済してしまっても、前記のとおり、個々の事案によって消滅時効の援用ができるケースはありますので、諦めずにご相談いただくことをお勧めします。

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