Archive for the ‘コラム’ Category

■引き直し計算と減額報酬

2020-11-19

債務整理の依頼を受けた後、業者から取引履歴が到着し、その取引が利息制限法を超える金利であった場合(いわゆるグレーゾーン金利)は、利息制限法に基づいた引き直し計算を行います。

引き直し計算をすることで、債務が大幅に減額されたり、過払金が発生したりすることがあります。この減額された部分に課される報酬が減額報酬と呼ばれるもので、10%程度を減額報酬としている事務所もあります。

しかし、この引き直し計算は、単に法律に基づいた計算という作業をしたにすぎず、依頼した事務所の交渉能力の結果ではありません。現在では、この引き直し計算の結果を争ってくる業者はほとんどないため、そもそもこれについては交渉すらすることもありません。

よって、この減額報酬がある事務所とない事務所では、債務整理にかかる費用が大きく異なることになります。

減額報酬のある事務所であれば、例えば、50万円の債務が引き直し計算で10万円に減額されたとすると、この40万円の減額部分に10%の減額報酬(4万円)がかかることになります。

債務整理手続は、依頼者の方の生活再建のために行うものですが、このような費用がかかるとすれば、業者に対する債務が減ったとしても、新たな負担を抱えることにもなりかねず、本末転倒であると言えます。

当事務所では、このような減額報酬はいただいておりませんので、安心してご依頼いただくことができます。

 

■時効の援用について

2020-11-11

「ずっと以前にお金を借りたことがある業者から、突然督促状が届いた。どうすれば良いか?」という内容の相談があります。

 実際に借りた業者であり、まだ残高が残っているのであれば、確かに支払う義務はあります。ただ、一定の条件を満たせば、「消滅時効の援用」をすることで、支払義務から逃れられる場合があります。

 消滅時効については、民法166条に、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき、に債権(借金)は時効によって消滅する旨が定められています。

 貸金業者との取引においては、ほとんどの場合、上記の①が対象となります。「権利を行使することができることを知った時」とは、簡単にいえば、業者側が「お金を返せ」と言える時です。

 例えば、毎月20日が支払日であれば、借主は20日のうちに払えば良いわけです。ですから業者側も、20日が終わるまでは「返せ」とはいえません。21日になった時点でまだ返済されていなければ、そこで初めて「返せ」と言えますので、ここが「権利を行使することができることを知った時」となり、時効の起算点となります。

 しかし、ここから5年間払わなかったからといって、時効により借金が自動的に消滅するわけでありません。この場合に借金を消滅させるには、貸金業者に対し「消滅時効を援用する」旨の意思表示が必要です。これをやらない限り、貸金業者側は延々と督促を続けてきます。数年間払っていなければ、遅延損害金も相当が額に上るでしょうから、30万円しか借りていなかったのに、100万円以上を請求されることもあります。

 また、支払いをしていない5年の間に、裁判を起こされたり、貸金業者と支払いについての話をしたりすると、消滅時効の援用ができないこともありますので注意が必要です。

 いきなり高額の督促状を送りつけられ、「給料を差し押さえる」「銀行口座を差し押さえる」等の文言が載っていれば、驚いてご自身で業者へ連絡してしまう方もみえると思います。しかし、そこで「分割払いにしてくれないか?」や「今すぐは払えないので少し待ってくれないか?」等のやり取りをしてしまうと、承認による「時効の更新」(民法152条)となってしまうことがあり、これまでの期間がゼロに戻り、新たに時効期間が進行する、つまり消滅時効の援用ができなくなるようなことになりかねません。

 数年間払っていない業者から督促状が届いた場合、慌ててご自身で業者に連絡せず、当事務所へご相談いただければ、消滅時効を援用することで、借金を払わなくてよくなるかもしれません。

 

 

■裁判所からの通知

2020-11-06

「裁判所から通知が届いたが、どうしたら良いか?」という相談が増えています。

消費者金融やカード会社への返済を数ヶ月程度怠っていると、裁判所から通知(特別送達)が届くことがあります。

裁判を起こすには手間も費用もかかりますので、こうなってしまうと、なかなか分割払いには応じてくれません。

だからといってほったらかしにしてけば、そのまま判決が出され、その後は勤務先を知られていれば給料の差押え、銀行口座が知られていれば口座の差押え等をされる可能性があります。

また、身に覚えのない請求(例えば架空請求)であったとしても、裁判所からの通知を放置してはいけません。

何もしないでいると相手の主張がすべて認められることになってしまうので注意が必要です。

裁判所から通知が届いた場合は、身に覚えのあるなしにかかわらず、至急専門家への相談をお勧めします。

■所有権留保について

2020-10-23

 自動車を購入する場合、多くの方がローンを利用されると思います。

 購入者Aが販売会社Bから100万円の自動車を、信販会社Cを通してローンで購入した場合、AがBに払うべき代金100万円をCが立て替えてBへ支払い、購入代金100万円に分割手数料を加えた金額を、AがCに分割で支払うという流れになります。

 このように、信販会社のローンで自動車を購入すると、たいていの場合は自動車の所有者は信販会社Cとなっています(車検証で確認してみて下さい)。ローンの完済までは、購入者に所有権を渡さず、信販会社に留めておく、これが所有権留保です。ですので、ローン支払い中は、原則として自動車を売却することはできません(一方、銀行のカーローンは、このような所有権留保が付かないことが多いですが)。

 ですから、もしローンの返済が滞った場合は、信販会社は自動車の引き上げを要求してきます(自分の物だから当然といえます)。そして引き上げた自動車を売却して残債に充て、それでもローンが残るようであれば、購入者が支払わなければなりません。

 これは債務整理を行う場合も同様で、信販会社Cに専門家が介入すると、Cは購入者に車の引き上げを要求してきます。しかし、任意整理においては、介入する業者を選択することができますので、カードローンのみ債務整理を行い、自動車のローンはそのまま払い続けることが可能です。

 ここで注意しなくてはいけないのは、信販会社Cで自動車ローンとカードローンの2つの取引がある場合です。この場合、カードローンだけを分離して債務整理ができる業者とできない業者があります。もし、分離できない業者に誤って介入してしまうと、上記のとおり、自動車を引き上げられてしまうことになります。こうなってしまうと、後から撤回することはなかなかできません。

 自動車ローンのお支払いにお困りの方、ご自分の自動車ローンが所有権留保かどうか不明な方は、当事務所にご相談下さい。

 

 

 

 

■経費ファクタリングとは?

2020-10-15

 給与ファクタリングに代わって登場してきたのが、「経費ファクタリング」です。

 仕事で利用した交通費や宿泊費、その他の経費は、本来会社から精算してもらえるものです。しかし、その日に精算してくれる会社もあれば、決まった締め日があり、給料日に精算というところも多くあります。

 例えば、今日交通費と宿泊費で3万円使ったけれども、これらが精算されるのは来月の給料日になる、こともあるわけです。その間、どうしても現金が必要になった場合に、その経費分を領収書等と引き換えに買い取ってくれるサービス?が、「経費ファクタリング」です。

 前回お伝えしたとおり、本来のファクタリングは「債権の買取」ですので、ファクタリング業者は買い取った債権の債務者、つまり会社に支払いを請求することになります。

 しかし、「経費ファクタリング」も給与ファクタリングと同様、買い取ってもらった債権を、利用者が買い戻すのが一般的です。しかもその際、かなり高額な手数料を取られることになります。一例を挙げると、2万円分の経費を買い取ってもらい、給料日に4万円で買い戻す、ような感じです。結局のところ、給与ファクタリングと同じような仕組みを取っています。

 利用者本人が債権を買い戻すのですから、実際にはお金を借りているのと同じです。仮に、買い取ってもらった日から支払日である給料日までが1ヶ月であれば、上記の例で言えば、1ヶ月で100%の利息を取られていることになります。年利に直せば1200%という超高金利です。中には契約書を交わす業者もあるようですが、実質はヤミ金と変わらないと言えるでしょう。

 給与ファクタリング同様、「経費ファクタリング」でもお困りの方は、当事務所へご相談下さい。

■給与ファクタリングとは?

2020-10-12

 一時、「給与ファクタリング」という金融サービスがはやっていました。

 そもそも「ファクタリング」とは、他人の売掛金債権を買い取り、その債権を回収する業務であり、これ自体は何ら違法ではありません。

 例えば、A社がB社に「3ヶ月後を支払日とする300万円の売掛金債権」をもっていたとします。そこでA社に緊急の資金需要が生じましたが、手元に現金がありません。その場合に、ファクタリング業者であるC社に、上記の売掛金債権を買い取ってもらいます。

 仮に、C社の手数料が3%だとすると、A社には291万円が入ることになります。そして支払期日である3ヶ月後に、C社はB社から300万円を回収します。差額の3%(9万円)がC社の利益となるわけです。これがファクタリングであり、中小企業や個人事業主等が、緊急の資金が必要となった場合に行われる取引です。

「給与ファクタリング」は、この「売掛金債権」を「賃金(給与)債権」に置き換えたものですが、通常の債権と異なり、賃金債権には「直接払いの原則」というのがあります。労働者の給与については、会社は労働者に対し、直接払わなければならない、というきまりです。

 賃金(給与)債権を譲渡することは禁じられてはいませんが、その場合であっても、会社は労働者に直接賃金を払わなければならないとされています(最判昭43.3.12)。

 そのため、給与ファクタリングにおいては、通常のファクタリングとは異なり、ファクタリング業者は利用者本人へ請求しなければならず、結局のところ、金銭の貸付と変わらないことになります。

 そこで金融庁でも、このような業者は貸金業に該当するため、貸金業登録を受けずに業務を営む者は、違法なヤミ金業者である旨が指摘されています。また、令和2年3月24日の東京地方裁判所の判決においても、給与ファクタリングは、貸金業法や出資法の金銭の貸付に該当し、貸金業法の定める上限利率を大幅に超過する取引であるため無効で、出資法にも違反するので刑事罰の対象になる旨が判示されました。

 給与ファクタリングにおける高金利での貸付が上記の要件を満たせば、民法上の不法原因給付にあたるため、返済の必要がないことになります。

 給与ファクタリングでお困りの方は、お早めに当事務所へご相談下さい。

 また、前記のとおり給与ファクタリングについては、金融庁や裁判所からその違法性が指摘されたためか、次第に姿を消しつつあります。それに代わって、「経費ファクタリング」なる業者が増えてきました。これについては、次回お話ししたいと思います。

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