■給与ファクタリングとは?

 一時、「給与ファクタリング」という金融サービスがはやっていました。

 そもそも「ファクタリング」とは、他人の売掛金債権を買い取り、その債権を回収する業務であり、これ自体は何ら違法ではありません。

 例えば、A社がB社に「3ヶ月後を支払日とする300万円の売掛金債権」をもっていたとします。そこでA社に緊急の資金需要が生じましたが、手元に現金がありません。その場合に、ファクタリング業者であるC社に、上記の売掛金債権を買い取ってもらいます。

 仮に、C社の手数料が3%だとすると、A社には291万円が入ることになります。そして支払期日である3ヶ月後に、C社はB社から300万円を回収します。差額の3%(9万円)がC社の利益となるわけです。これがファクタリングであり、中小企業や個人事業主等が、緊急の資金が必要となった場合に行われる取引です。

「給与ファクタリング」は、この「売掛金債権」を「賃金(給与)債権」に置き換えたものですが、通常の債権と異なり、賃金債権には「直接払いの原則」というのがあります。労働者の給与については、会社は労働者に対し、直接払わなければならない、というきまりです。

 賃金(給与)債権を譲渡することは禁じられてはいませんが、その場合であっても、会社は労働者に直接賃金を払わなければならないとされています(最判昭43.3.12)。

 そのため、給与ファクタリングにおいては、通常のファクタリングとは異なり、ファクタリング業者は利用者本人へ請求しなければならず、結局のところ、金銭の貸付と変わらないことになります。

 そこで金融庁でも、このような業者は貸金業に該当するため、貸金業登録を受けずに業務を営む者は、違法なヤミ金業者である旨が指摘されています。また、令和2年3月24日の東京地方裁判所の判決においても、給与ファクタリングは、貸金業法や出資法の金銭の貸付に該当し、貸金業法の定める上限利率を大幅に超過する取引であるため無効で、出資法にも違反するので刑事罰の対象になる旨が判示されました。

 給与ファクタリングにおける高金利での貸付が上記の要件を満たせば、民法上の不法原因給付にあたるため、返済の必要がないことになります。

 給与ファクタリングでお困りの方は、お早めに当事務所へご相談下さい。

 また、前記のとおり給与ファクタリングについては、金融庁や裁判所からその違法性が指摘されたためか、次第に姿を消しつつあります。それに代わって、「経費ファクタリング」なる業者が増えてきました。これについては、次回お話ししたいと思います。

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