3年ほど前に出版された「ブラック奨学金」(今野晴貴著 文芸新書)という本があります。日本の奨学金制度について考察し、諸外国の奨学金との比較や、滞納した場合における日本学生支援機構の取立方法に言及してあり、一読の価値があります。
債務整理の相談に来られる30代以下の世代の方の中には、債権者の中に日本学生支援機構が入って方も散見されます。奨学金自体の利息は低く設定してあるため、通常の貸金業者やカード会社と比べてメリットは低いです。しかし、奨学金を債務整理手続に入れる際の最大の障害は、「奨学金には保証人」がついていることです(機関保証を除く)。
債務整理手続(任意整理や法的整理を問わず)を開始すると、債権者は通常の弁済が困難になったと判断し、保証人(原則父母や叔父叔母等)へ請求することになります。ということで、両親や親戚へは迷惑を掛けられないと考える方がほとんどですので、奨学金を除外した他の貸金業者のみで債務整理をしていくことが多いです。
奨学金の返済を長期間怠っていると、一括請求を求めた上で、裁判所に支払督促を申し立てることがあります(おおむね9ヶ月以上の滞納)。これを無視してしまうと相手方の言い分がすべて認められることになり、大変な不利益を被ることになりますので、専門家への相談をお勧めします。奨学金の返済には、「返還期限猶予」や「減額」の制度もあるようですので、日本学生支援機構へ返済の相談をしてみるのもひとつの方法です。
奨学金も「貸金」であることには変わりありませんので、消滅時効は存在します。しかし、日本学生支援機構は、いわゆる「商人」ではありませんので、サラ金やカード会社のように5年ではなく、「10年」です。よって、消滅時効の援用はなかなか難しいでしょう。但しこれも、上記の支払督促のような裁判上の請求をされた場合は、さらに消滅時効の完成は猶予されます。
また、長期間の返済を怠っている方に対して、その回収を債権回収会社に委託することもあります(アルファ債権回収、日立キャピタル債権回収等)。その場合は、債権回収会社から督促状等が届くことになりますので、知らない業者だからと無視してはいけません。
いずれにせよ、日本学生支援機構が貸主とはいえ、奨学金も「借金」には変わりありませんので、通常の貸金業者やカード会社と同様、返済が難しくなった場合は放置(放置すると遅延損害金が増えていくだけです)せず、早めに専門家へご相談下さい。