相続した親の借金、時効援用と相続放棄どちらを選ぶ?

突然届いた親の借金の督促状…まずやるべきこと、やってはいけないこと

亡くなった親の借金の督促状が、ある日突然届く。多くの方が驚き、どうしてよいか分からなくなってしまうのは当然のことです。しかし、このような状況で最も大切なのは、慌てて行動を起こさないことです。誤った対応一つで、本来支払う必要のなかった借金を全額背負う事態になりかねません。

まずは深呼吸をして、以下の2点を徹底してください。

【まずやるべきこと】

  • 書類の保管: 届いた督促状や関連書類は、すべて捨てずに保管してください。そこには、いつからの借金なのか、債権者は誰なのかといった重要な情報が記載されています。
  • 冷静な情報収集: 債権者にすぐに連絡するのではなく、まずはこの記事のような信頼できる情報源から、ご自身の状況で取りうる選択肢について知識を得ることが重要です。

【絶対にやってはいけないこと】

  • 債務を認める発言: 債権者に電話をかけ、「少し待ってください」「分割なら払えます」など、支払い義務を認めるような発言は絶対にしてはいけません。
  • 一部でも返済する行為: たとえ1円であっても返済してしまうと、借金の存在を認めたことになり、後述する「時効」を主張できなくなる可能性があります。これは、時効が完成した後の返済においても同様のリスクを伴います。

これらの行動は「債務の承認」と見なされ、法的に極めて不利な状況を招きます。まずは冷静に、正しい知識を得ることから始めましょう。

時効援用か相続放棄か?あなたの状況に合うのはどっち?

親の借金から逃れるための主な選択肢は「時効の援用」と「相続放棄」の2つです。どちらを選ぶべきか、その最大の判断基準は「あなたがプラスの財産(自宅不動産や預貯金など)を相続したいかどうか」にあります。亡くなった親の借金の対応は、この点を明確にすることから始まります。ご自身の状況と照らし合わせながら、それぞれの特徴を見ていきましょう。

時効援用と相続放棄のメリット・デメリットを比較した図解。プラス財産を相続したい場合は時効援用、借金から確実に解放されたい場合は相続放棄が選択肢となることを示している。

プラス財産があるなら「時効援用」を検討

「親が残してくれた実家だけは手放したくない」「預貯金がいくらか残っているはずだ」といったケースでは、時効の援用が有効な選択肢となります。

時効の援用とは、「借金の時効が成立しているので、支払い義務はありません」と債権者に対して意思表示をすることです。これが認められれば、借金の支払い義務だけを消滅させ、プラスの財産はそのまま相続できるという大きなメリットがあります。

実際に、「親の借金を相続したが、どうやら時効の様子。相続人が時効の援用をするにはどうすれば良いか?」というご相談は多く寄せられます。相続人が時効を援用する場合、一般的には、時効が成立していることを確認した上で、その意思を明確に伝える「時効援用通知書」を作成し、証拠が残る内容証明郵便で債権者に送付します。この消滅時効の援用は、借金への対応方法の一つとなり得ます。

ただし、もし時効が成立していなかった場合、時効を援用しようとした行為そのものが「相続を承認した」と見なされ、借金全額の返済義務を負うことになるという重大なリスクを伴うことがあります。

借金しかない・不明なら「相続放棄」が安全

「プラスの財産は全くない」「借金の総額が分からず、他にも隠れた借金があるかもしれない」といった、少しでもリスクを避けたい場合には、相続放棄が有力な選択肢になります。

相続放棄とは、家庭裁判所に申述を行うことで、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も、初めから一切相続しなかったことにする手続きです。相続放棄が有効に成立すれば、亡くなった親の債務を相続しない扱いになります。

最大のメリットは、その確実性です。時効が成立しているかどうかを調査する必要もなく、未知の借金が後から見つかった場合でも、相続放棄が有効に成立していれば、その債務を相続しない扱いになります。一方で、実家や預貯金など、どのようなプラスの財産も一切相続できなくなるというデメリットがあります。

注意すべきは、相続放棄には「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」という厳格な期限が定められている点です。この期間を過ぎると原則として手続きができなくなるため、迅速な判断が求められます。様々な債務整理の方法の中でも、相続が関わる場合は特に期限が重要になります。

参照: 裁判所「相続の放棄の申述」

【要注意】時効援用後は相続放棄が認められないおそれがあります

ここで、絶対に知っておかなければならない重要なルールがあります。それは、「時効の援用」という行動が、法律上「相続を承認した(法定単純承認)」と評価される可能性があるということです。

これは何を意味するのでしょうか。

もし、あなたが「時効だろう」と判断して債権者に時効援用の通知を送ったとします。しかし、実際には時効が成立していなかった場合(例えば、過去に裁判を起こされていた、債務を承認していたなど)、時効の援用は失敗に終わります。その場合、時効援用の行為が法定単純承認と評価され、その後の相続放棄が認められないおそれがあります。

そのため、「時効援用を試して、うまくいかなければ相続放棄をする」という判断には注意が必要です。時効援用の行為が法定単純承認と評価されると、相続放棄が認められないおそれがあります。安易に自己判断すると、本来回避できた可能性のある保証債務などの返済義務を負う結果になるおそれがあります。

判断を誤る前に、まずは司法書士へご相談ください

ここまでお読みいただき、相続した借金への対応が、いかに専門的な判断を要するかお分かりいただけたかと思います。時効が成立しているかどうかの正確な判断、他に財産や借金がないかの調査、そして何より、あなたの状況にとってどちらの手続きが最適なのかを見極めることは、専門知識なしには極めて困難であり、危険です。

私たち司法書士にご相談いただければ、以下のようなサポートが可能です。

  • 正確な状況判断: 借金の内容を調査し、時効が成立している可能性を法的な観点から精査します。
  • 最適な手続きのご提案: 相続財産の状況やご意向を丁寧にお伺いし、時効援用と相続放棄のどちらが最善かを具体的にご提案します。
  • 手続きのサポート: 相続放棄申述書などの裁判所提出書類の作成、認定司法書士の代理権の範囲内での債権者対応などをサポートします。ご依頼内容や債権額、相手方の対応に応じて、督促への対応方法を個別に検討します。
司法書士てらやま事務所で、司法書士が親の借金問題で悩む相談者に解決策を提案している様子。

法律の専門家として手続きを確認するだけでなく、ご事情を伺いながら、適切な解決方法を検討します。詳しくは当事務所の司法書士紹介ページもご覧ください。

一人で抱え込まず、取り返しのつかない事態になる前に、まずはお気軽にご相談ください。状況に応じた解決方法を検討できるようサポートいたします。

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