長期間返済していないと、書面での催告や裁判所からの呼出状が届いたりすることは以前にもお伝えしましたが、中にはいきなり「訪問による督促」をしてくる業者もあります。封書やハガキでの督促なら、そのまま無視しておくという手もあるにはありますが、さすがに自宅を訪問されての督促は、相当な心理的圧迫を受けることと思います。もちろん、業者の狙いはそこにあります。
まず、訪問された側として第一に思われることは、「なぜ自分の住所がわかったのか?」ではないでしょうか。10年以上前に借り入れをして以降、何度か引越しをしているのにどうして?と不安に思われても無理はありません。しかし、業者は債権回収目的という利害関係人であるため、顧客の住民票の異動について調査することができるのです。「何年も音沙汰がなかったのに、住民票を動かした途端に請求が来た」のはよく聞く話です。そしていったん督促が再開されると、きちんとした手続をしない限り、また督促が続くことになります。たとえ消滅時効の期間が経過していても、それを援用する旨の主張をしない限り、時の経過で借金が自動的に消えることはないからです。
そして訪問による督促を受けたことを、「家族には知られたくない」と思われるのも当然でしょう。借り入れをした10年以上前とは生活環境が変わっている方も多くみえると思います。当時は独身だったが、現在は結婚している場合、配偶者に過去の借金のことは知らせていない事が一般的ではないかと思います。そういった場合、過去の借金を配偶者に知られることが、今の生活に何らかの影響を及ぼすことは想像に難くありません。そして業者はそういった弱みにも付け込んできます。
また、長期間返済をしていなければ、残元金に加え、びっくりするほどの高額な遅延損害金を上乗せされて請求されますので、その金額を見ただけで狼狽えてしまう方もいるかと思います。その場合の業者の常套手段としては、まずその額を一括で支払えと請求しておき、「今日のところは手持ちの分だけ払ってもらえば、後は分割の相談に乗る」等と甘言を弄してきます。そこで安心して払ってしまってはいけません。
突然訪問を受け、「早く帰って欲しい」「家族に知られるかもしれない」「近所の目もある」等々動揺もされるでしょうが、うっかり1,000円でも払ってしまえば、遅延損害金を含めた全額を認めてしまったことになり(債務の承認)、その後の消滅時効の援用は大変困難になります。
もしこのような訪問による督促を受けた場合、早くその場を切り抜けたいからといって安易な対応をせず、「身に覚えがない」「専門家に相談するから」とだけ繰り返し言い、あまり長く話さずにいったん帰ってもらうことです。その後、早急に司法書士等に消滅時効援用の手続を依頼すべきです。