「私でも自己破産できるのでしょうか?」以前依頼のあった方からの質問でした。
その方は40代の男性でひとり暮らし。10年以上同じ派遣会社で働いています。これまでも多少の昇給はあったのですが、お盆や年末年始等、休日が多い時は出勤日数が減り、当然その分収入も減ってしまいます。また、派遣先が変わったりする際に、次の派遣先に勤務する場合の待機期間等も給料は発生しません。
そういった収入が少なく、生活が厳しいときに借り入れやクレジットカードの利用を始め、それが少しずつ増え、5社の利用で約350万円に達し、月の返済が10万円近くなったときに、当事務所へ相談にみえました。
お話を伺ってみますと、毎月の手取りが多い時で20万円ほど、少ない時は17万円を切るとの事。そこから家賃が5万円、食費を切り詰めて約3万円、光熱費や電話代で2~3万円、通勤のためのガソリン代が約2万円、実家に仕送りが1万円、合計約13~14万円が固定での支出との事でした。
そうすると毎月10万円近い返済は不可能で、返済したら借りなければ生活していくことはできません。ここ数年は返済したら借りられる分を借入て生活費に充てる、「自転車操業」の日々だったようです。もう少し家賃の安い所へ引っ越すことも考えたのですが、今の生活では新規入居の際の初期費用を貯めることはできず、かと言って新たに借り入れをして引越しをしたとしても、その後返済していける自信はありません。そんなことをお聞きしました。
各金融業者と交渉し、将来の利息をカットして元金のみを返済していく「任意整理」だと、毎月の返済を6万円程度まで抑えることはできそうでした。確かに、現在の毎月10万円の返済が6万円に減額されれば、一見楽になるようにみえますが、今の生活状況をからすれば、それでもギリギリです。休みが多い月や体調を崩して仕事を休んだりした場合、すぐに払えなくなってしまいます。
そこで「自己破産」の提案をしました。お聞きしたところ、借入の原因は収入が少なかった際の生活費の補填として借りたものが積み重なって増えたのであり、浪費やギャンブルでの利用もありませんでしたし、お持ちの財産も20年近く載っている自動車が1台だけとの事でしたので、特に破産への障害はありませんでした。
そこで冒頭の「私でも自己破産できるのでしょうか?」と言われました。ご相談者は、破産とは、病気や怪我で働けなくなった人や、天災等で職場を失った人等、特別な事情がある人しかできない、自分のように健康で働けている人は、きちんと返済していくしかない、と考えられていたようです。
破産にはそのような制限はなく、支払が不能であれば良い事を説明し、ただ、浪費やギャンブル、投資等での利用があった場合は、難しいときもある旨をお伝えし、自己破産でご依頼を受けました。
債権調査の結果も、お聞きしていたとおり生活費での利用がほとんどでしたので、特に問題なく、免責決定が出て、すべての借金から解放されることになりました。
自分が借りたものですので、返済していくのは当然ですが、どうしても難しい場合は自己破産手続を利用することができます。無理な任意整理をやっていっても、後々返済できなくなることもありますので、債務整理の依頼をする場合は、先々のことも考えてどの方法でいくかを考えられた方が良いです。