■保証債務と消滅時効の援用

 身に覚えのない借金の督促や、聞いたこともない債権回収会社から請求を受けた場合、どのような対応をされるでしょうか? 借りた覚えもないので何もせずにそのまま放置するのも一つの方法でしょうが、先日相談に来られた方で、以下のようなケースがありました。

 1年ぐらい前から、ある債権回収会社より「百数十万円を払え」という督促状が届くようになったのですが、まったく身に覚えがないため、「架空請求」や「詐欺」ではないかと考え、無視し続けていました。督促状は毎月送られてくるようになり、そのたびごとに「遅延損害金」も増え、請求額も大きくなってきていました。

 ネットで調べたところ、その債権回収会社は実在し、しかもかなりの大手でしたので、どうやら「架空請求」や「詐欺」ではなさそうでしたが、であればなおのことおかしいのでは?と考えました。なぜなら、そのご相談者は、これまで車のローンも組んだことはなく、クレジットカードすら1枚も持っていません。まして「借金」などしたことがなかったからです。

 ただ、煩わしい督促の電話がかかってくるわけでもなく、月1回督促状が届くだけなので、そのままゴミ箱へ放り込んで済ませていました。あえてその会社に問い合わせることもしませんでした。まったく身に覚えのない方なら、当然の行動かもしれません。

 しかし、しばらくすると裁判所から呼出状が届きました。訴えたのは督促状を送ってきていた債権回収会社であり、「被告」のところには自分の名前が書いてあります。単なる郵便での督促状であれば無視で済ましてきましたが、さすがに裁判所からの通知には何かしなければと考えられ、当事務所に相談にみえました。

 訴状から内容を確認したところ、ご自身の借金等の請求ではなく、10年以上前に知人の車のローンの「連帯保証人」になっておられ、その知人がずっと返済を怠っていたため、連帯保証人であるご相談者に請求がきていたことが判明しました。

 その説明をしたところ、確かに知人の連帯保証人になったことを思い出したとの事でした。訴状によると、ローンは4年払いでしたが、契約から2年目を過ぎたころから支払いをしていない様子でした。そう言われると、その頃たまに自分のところへローン会社から請求書が送られていたような気がするとの事でした。しかしそれ以上の督促もなかったため忘れてしまったようで、また、その知人とも疎遠になっていたため、連帯保証人になったこと自体を失念していたようでした。

 自分で借りたものであれば忘れることはないでしょうが、保証人は自分が返済をするわけではないため、このご相談者のように「連帯保証人になったこと自体」を忘れてしまうこともあるでしょう。また、保証した相手が家族であればともかく、単なる知人であれば、その後の環境の変化で付き合いがなくなることもあるため、忘れてしまってもやむを得ないといえるのではないかと思います。ただ、その知人との関係が途絶えたとしても、当然ですが、保証人としての地位が消えることはありません。

 ご相談者の場合は、主たる債務者(知人)の最終弁済日から5年以上が経過していたので、裁判上で消滅時効の援用を行い、無事に保証債務を消滅させることができ、大変喜んでいただけました。裁判所からの通知が届いた時に何も対応しなければ、自分が借りてもいない200万円程の債務を背負いかねないところでした。

 このようなケースもあるため、身に覚えのない借金の督促や、聞いたこともない債権回収会社から請求を受けた場合は、放置することなく、まずは専門家へのご相談をお勧めします。

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